アプローチとは、敷地境界の門から建物の玄関までをつなぐ通り道のことですが、住宅においては家の外部だけではなく、室内も含めた住まい全体の印象に大きく関わってくる部分でもあります。そこで今回は、素敵なアプローチの実例を1つ1つそのデザインのポイントと一緒に紹介していきます。住まいの印象を決める大きな部分ですのでポイントを押さえながら、また室内からの見え方も考慮に加えていくと、より住まい全体としてまとまってきますよ。
まず紹介したいのは、土岐建築デザイン事務所が手掛けたダイチノイエ。その名の通り広大な大地に根ざし、平屋建ての3つに分かれた建物からなる住まいですが、建物だけにとどまることなく、テラスや中庭をうまく生かしながらプランニングされています。玄関先もそれに合わせて、生き生きとした緑の生える庭に枕木を緩やかに曲線を描きながら玄関へと導くことで、広大な大地と住まいの風景をアプローチに取り込みながら、やさしくしっかりと広大な自然から温かみのある住まいへと気持ちを切り替えるアプローチとなっています。
こちらのユミラ建築設計室が手掛けた住宅は、お施主さんのモミザの木を育て、その木に合うような家をつくりたいという要望から、アプローチを庭としながら、その庭と住まいの中が一体となるように計画されています。アプローチには、玄関まで真っ直ぐ伸びる古い枕木に加えて、上部の鉄のフレームを通り抜けながら玄関へと向かっています。これらの木や鉄が風化して、ありふれたモダンスタイルとは異なる、この住まい独特の表情が生まれることまでデザインされています。
こちらのAKAZA ARCHITECTURAL DESIGN OFFICEが手掛けた段々状の玄関までのアクセス空間が印象的な住まいは、丘陵地の住宅地に建ち、開けた敷地の特性を生かして、人々が集う場となるように計画されています。ここで集う人々が通るであろうアプローチは、敷地の高低差を利用して階段状にスラブが設けられています。さらに、この段々状のスラブは室内のフロアレベルにもつながり、土間とリビングとダイニングキッチンが異なる高さでこの丘陵地の傾斜に合わせられています。
モダンスタイルもいいけど、やっぱり住まいは和風住宅がいいという方も多いと思います。そうした住まいにとっての玄関先にぴったりなのは、やはり趣のある和風庭園でしょう。緑が風になびく音を聞きながら、水が流れる涼しさを感じ、玄関までの石畳を歩いていく時間は、きっと心地いいものになるでしょう。
敷地の形が特殊であったり、そもそも狭い敷地の場合は、なかなか余裕を持って玄関先をデザインすることが難しいですが、こちらの有限会社加々美明建築設計室が手掛けた住宅では、細いアプローチ空間ながらも左側にあるガレージの壁をオニックスの透光不透視のスクリーンで平らなきれいな面を出し、反対側にはやわらかな緑を植えることで、両サイドで上手く対比をつくり出しています。ご夫婦それぞれがキッチンを持っている住まいにぴったりのオリジナルな玄関先にデザインされています。
写真:新写真工房堀内広治